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幼児教育の基本

 22世紀に向かって生きてゆく子どもたち。その生涯にわたる学びの土台をつくる幼児教育の重要性に注目が集まっています。

 同時に幼児教育への期待から、その教育内容や方法について、とりわけ小学校以降の教育への接続という視点から、さまざまな新しい提案や取組みが行われるようになりました。

 幼稚園教育要領の改訂に沿って、新たな幼児教育の姿が模索される時代になるでしょう。一方、そんな今だからこそ、不易な幼児教育の基本について確認しておくことも重要なことではないでしょうか?

 ここでは、それらを5つの「問い」の形でお示ししたいと思います。

 

島根大学大学院教育学研究科教授 肥後 功一

​【出典】「未来を生きるこどもたちのために」全日本私立幼稚園連合会

子どもを心から愛していますか?

子どもはあなたのことを大好きですか?

幼児期は、「言葉にならない安心感」が揺れ動く時期

 これからの幼児教育では、さまざまな学びにつながる力が重視されます。新しい知識や未知の体験に目を輝かせる「学びの姿(知的探究心)」を育むことは重要ですが、そうした姿が出てくるための重要な前提があります。それは「大好きな大人(親や先生)に自分の存在を丸ごと認められ愛されている」ということ。当たり前のようですが、実は幼児期は、こうした「言葉にならない安心感」が揺れ動く時期でもあります。学びに向かう土台としての情緒的な安定をしっかりと支えていくことが大切です。

子どもの力を信じていますか?

子どもの意欲を中心にした教育ですか?

いろいろなことを「させよう」としていませんか?

 主体的な学びが重視されています。私たちは子どもの多様な可能性をできるだけ伸ばしてやりたくて、つい、いろいろなことを「させよう」としてしまいがちです。子どもにはもともとヒトという種に固有の生きる力が備わっています。食べることや眠ること、五感に導かれて外界を探索すること、体を使って自由に動き回り思いを表現することなどです。こうした本来備わっている子どもの力を信じ、うまく引き出し、しっかりと伸ばしてやることが、後の学びに向かう本当の意欲につながっていきます。

それは本当に遊びですか?

遊ばせになっていませんか?

子どもは「何もない」ところからでも遊ぶもの

 幼児教育は遊びを中心とした生活の中で行われます。遊びの環境を工夫することは幼児教育の根幹であるともいえるでしょう。ただ、これはどうか、あれはどうかと工夫するあまり、園内の環境がまるで「遊びのショッピングモール」のようになっている状況を目にすることがあります。本来、子どもは「何もない」ところからでも遊ぶものです。さあ、これをして遊んでごらんと言わんばかりの「指示的な環境」は、子どもの本来の遊ぶ力を奪ってしまいます。

「今、伸びようとしている力」が

見えていますか?

幼児期の発達は個性的で個人差の大きいもの

 幼児期の子どもの発達は実に個性的で個人差の大きいものです。近年は家庭環境の違いなどから年長児でも、以前のような「そろい」を期待することは難しい状況にあります。個々の「伸びようとしている力(発達的ニーズ)」を見出し、一人ひとりの状態に応じた支援を行いながら、よりよい集団を形成していく専門性が求められます。特につまずきの見られる子どもについては、問題のあるところだけに目を奪われずに、発達の全体像をとらえ、その子どもの良さや力を認め、伸ばしていこうとする支援が大切です。

「話したい」と思える相手に

なれていますか?

担任の先生がわが子のいちばん話したい相手である

 対話的な学びが重視される中、子どもの対話の力を伸ばす幼児教育が求められています。先生や友達との協調的な対話だけではなく、環境との対話、本との対話、自分自身との対話など、広い意味での言語力、コミュニケーション力を育むことが重要です。

 そのためにはまず何よりも、先生自身が子どもの「いちばん話したい相手」になれていることが大切です。先生に自分のお話を聴いてもらう楽しみ、先生の言葉と出会う楽しみ…それが対話の力を育てます。担任の先生がわが子の一番話したい相手であること、それは保護者との信頼関係の基盤でもあるでしょう。

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